森川佳紀のララララブライフ

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教育者+駅員+(中年)大学生
「西の方は雪かしらねぇ」と、横浜を過ぎたあたりでおばさんが言った。
「雪なんですか?」と僕も何となくこたえる。
それまでは特に会話するでもなく、ふたりとも黙って窓の外を見ていたのだった。
おじさんのほうは、上の寝台であぐらをかいて分厚い時刻表を読んでいる(まさに時刻表を「読んで」いた)。
「場所によっては雪らしいわよ」
「今日は東京も寒かったですからねぇ」
と、何となく会話が始まった。

おばさんは年に数回、電車でのんびりと一人旅するのが好きだそうだ。
ちょうど友達のお見舞いで新岩国まで行く用事があったので、最後の「はやぶさ」に乗って行ってみることにした。帰りは町田の自宅まで「青春18きっぷ」(!)で帰るという。

いままでに旅行したいろいろな名所の話や、おばさんの生まれがいま僕が住んでる場所のすぐそばだとわかって盛り上がったりしているうちに、
おばさんが地元の子供たちを集めて私塾のようなことをしているということがわかった。
僕もいい歳しながら大学生で且つ塾講師という自分の身分を明かし、そしたら教育についての話になり、いつの間にか日本の学校教育のあるべき姿みたいな話になって、日本酒とビールを飲みながら語っているうちに気づいたら名古屋に近かった。

このあたりまで来て初めて、上の段のおじさんと話をする。
おじさんは時々カメラを持ってどこかへ行き、戻って来ては上の寝台で時刻表を読み、そして何かを書いていた。
僕とおばさんは、このおじさんの職業はなんだろうとひそかに話し合っていた。僕が何かの記者ではないかと思う、と言うと、おばさんはひょっとして彼も学校の先生ではないか、と予想した。
聞いてみるとなんと「駅員」だという。豊橋にある私鉄の駅員さんなのだそうだ。ホンモノだったのである。
住まいは豊橋だが、最後の「はやぶさ」完全乗車のために、始発の東京まで行ってから乗車したという。熊本へ着いたら九州新幹線や肥薩線を堪能したあと、今度は最後の「富士」に乗って帰る予定。気合の入り方が違う。鉄道好きが昂じて駅に就職したのかと聞くと、そうだと言う。やはりそういうものらしい。

しゃべっていると車内が暗くなった。寝台特急には消灯があるのだ。修学旅行みたいだと言いながら何となくひそひそと話をして、そろそろ寝ることにする。しかしまださすがに寝るには早い。というか寝台列車で寝てしまうなんてもったいない。
話を切り上げてカーテンで仕切ってはみたものの、全く眠くはない。
酒を飲みながら窓の外の景色を見る。至福である。

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